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石黒敬章著『昭和8年 戦争への足音』

  • 古刊

山口謠司

『昭和8年 戦争への足音』
石黒敬章 著

出版社: KADOKAWA (2016/10/1)
ISBN-10: 4044001855
ISBN-13: 978-4044001858
発売日: 2016/10/1

先週、世田谷若林にある「ひだまり友遊会館」で、「明治時代の雑誌について」というお話をさせてもらった。

その時、今年90歳になるというおじいさんから、「先生、今上天皇がお生まれになった時の話を教えましょうか」と言われた。「私は6歳で、そのころ、麻布に住んでいました」

今上天皇の生まれは昭和8(1933)年12月23日。
四人の女の子のあとに、生まれた長男である。
当時は、まだ生まれみなければ、男の子か女の子か分からない。
もし、男の子が生まれたら、次の天皇になる!とみんな、期待が高まっていた。
もし、男の子が生まれたら、何時でもいいから東京市内中のサイレンを鳴らしてそれを皆に知らせるということになっていたのだという。
そして、サイレンがなったら、みんなで大きな声を出して歌おう!
予定日の一か月前くらいから、みんな歌の練習をしたのだそうである。

 日の出だ日の出に 鳴った鳴ったポーオポー
 サイレンサイレン ランランチンゴン 夜明けの鐘まで
 天皇陛下喜び みんなみんなかしは手
 うれしいな母さん 皇太子さまお生まれになった

(北原白秋作詞 中山晋平作曲「皇太子さまお生まれになった」)

 さて、その今上天皇誕生の年に起こったことを伝える写真集が本書である。
 この写真集は、序文によれば、石黒敬章氏が、神保町の古本屋でたまたま購入した「外国時事写真通信No.11 自昭和八年三月二日 至七月十日」と「航空5」というアルバムに載せられたものから取って本にまとめられたものである。
 はたして、この二冊のアルバムは、じつは昭和20(1945)年、太平洋戦争終結後まもなく焼却処分されるべきものがたまたま残っていたものだという。
 昨年(2016.10.1〜12.25)、横浜の日本新聞博物館で「こんな時代があった 報道写真 昭和8年」として展覧会が開かれた。
 
 本書、表紙に見えるヒトラーは、ヒトラー政府最初の国会議員選挙(1933年3月5日)のラジオでの開票結果に耳を傾ける姿だという。
 ページをめくっていくと、なんと、その前日3月4日には、アメリカで、ルーズベルト大統領が叙任式で宣誓している。
 そして、日本は、2月24日に、国際連盟を脱退していた。
 副題に見えるように、昭和8(1933)年は、「戦争への足音」が国内外で響き始める年だったのである。