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川本三郎著『白秋望景』

  • 古刊

山口謠司

『白秋望景』
川本三郎 著
単行本: 433ページ
出版社: 新書館 (2012/1/26)
ISBN-10: 4403211054
ISBN-13: 978-4403211058
発売日: 2012/1/26

北原白秋に、「金魚」(大正八年「赤い鳥」)という詩があるのをご存知でしょうか。

母さん、母さん
どこへ行た。
紅い金魚と遊びませう。

母さん、帰らぬ、
さびしいな。
金魚を一匹突き殺す。

まだまだ、帰らぬ、
くやしいな。
金魚を二匹絞め殺す。

なぜなぜ、帰らぬ、
ひもじいな。
金魚を三匹捻じ殺す。

涙がこぼれる、
日は暮れる。
紅い金魚も死ぬ、死ぬ。

母さん、怖いよ、
眼が光る、
ピカピカ、金魚の眼が光る。

 北原白秋の詩や歌には、こんなふうな怖くて哀しくて、でも一度読んだら、心に引っかかってずっと忘れられないものがたくさんあります。
 白秋の心の中には、いったいどんな風景が広がっていたのでしょうか。
 川本三郎氏の美しい文章のなかに、北原白秋の童心と、白秋が生きた明治から太平洋戦争勃発までの空気がよみがえって来るような気がします。