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天狗にさらわれた少年 抄訳仙境異聞 (角川ソフィア文庫)

  • 古刊

山口謠司

天狗にさらわれた少年 抄訳仙境異聞 (角川ソフィア文庫)
平田篤胤著
今井秀和 現代語訳・解説

•文庫: 256ページ
•出版社: KADOKAWA (2018/12/22)
•言語: 日本語
•ISBN-10: 4044004269
•ISBN-13: 978-4044004262
•発売日: 2018/12/22

本書の現代訳をされた今井秀和先生のことを、ぼくは、親しみを込めて「ヨーカイ」と呼んでいます。不思議な力を身体中から放っているからです。もしかしたら、ヨーカイ先生は、本書の寅吉の生まれ変わりかもしれません。分からないことを訊ねると、まるで寅吉のように答えてくれるのです。
 さて、本書は寅吉が、異界(仙境)との往来で見聞きしたと言われる話を、平田篤胤が記録したものです。子安宣邦の校注、解説で岩波文庫ではすでに出版されていましたが、ちょっと固くて(もちろん、学問的というのも大切ですが)、せっかくの本書のおもしろみと可愛さに欠けるところがありました。それに対して今井秀和ヨーカイ先生の訳は、14、15歳ほどのませた寅吉の言葉を映し出すのにピッタリです。それに時々散りばめられた篤胤のイラストの可愛いこと!
 さらに最後の「学問について」という話は、一読の価値があります。
「全て学問というものは、魔道に引き込まれる原因にして、まずはよろしくないことです。その理由は、本当は学問することほどよいものはないのですが、まことの道理の極みまでに学び至る人はなく、大概は生学問をすることになるからです……」
 しばし、仙境を行ったり来たりする寅吉の言葉に耳を傾けていたら、自分もちょっと異界に行きたくなってしまいます。