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大角翠著『言語学者のニューカレドニア─メラネシア先住民と暮らして─』

  • 古刊

山口謠司

単行本: 291ページ
出版社: 大修館書店 (2018/8/25)
言語: 日本語
ISBN-10: 4469213713
ISBN-13: 978-4469213713
発売日: 2018/8/25

昭和22(1947)年生まれの女性が、東京大学を卒業してパリの大学へ。パリに行くのに、言語学者として当時、最も著名だったアンドレ・マルティネに手紙を書いて、受け入れてもらったとのこと!
本書には、東京女子大学名誉教授・大角翠さんが、東京からパリへ、そしてオーストラリアからニューカレドニアへと言語学研究の場を移しながら、失われつつある言語に対して抱く深い洞察が記されている。
グローバル化という言葉とともに、今や英語は、世界中で生きるためには必須の言語となりつつある。
そして、それと同時に、マイノリティと呼ばれる人たちが使う言葉は次第に消えて行く。
それは、日本国内の「方言」でも同じことだろう。
20年程前まで、大学の入学試験で面接をすると、地方から来た生徒たちには「方言」で話す人も少なくなかった。
しかし、今や、テレビを初めとするメディアの影響によって、面接で方言を聞くことはほとんどない。
大角さんは言う。「多様性こそ、私たちが失ってはならないものだ。一つのマイノリティ言語を失うということは、その言語にだけ存在していた希有な世界観や認知体系、叡智と繊細な感情のひだが永遠に失われるということだからだ」

結婚式をニューカレドニアで挙げるという日本人も少なくない。
美しい南海の楽園である。
ニューカレドニアでは、フランス語が「公用語」となっている。180年以上に及ぶ植民地政策がまだ続いているのである。
しかし、そこには「原住民」と呼ばれる人たちがいて、種族によって異なった言語を使っている。
観光で行っても、おそらくそうした言葉に触れることはほとんどあるまい。
ただ、そうした原住民とされる人たちのマイノリティ言語が存在して、今、まさに消えかかっているということにも、少し思いを馳せて欲しいと思うのである。

本書は、言語研究が具体的にどのように行われるのかということを知るためにも、とても興味深い。言語に関心のある人には是非、読んで頂きたい1冊である。