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プラハ、20世紀の首都 あるシュルレアリスム的な歴史

  • 古刊

山口謠司

プラハ、20世紀の首都
あるシュルレアリスム的な歴史

著者:デレク・セイヤー
訳者:阿部賢一、河上春香、宮崎淳史

単行本: 722ページ
出版社: 白水社 (2018/9/28)
言語: 日本語
ISBN-10: 4560095825
ISBN-13: 978-4560095829
発売日: 2018/9/28

 ヴァルター・ベンヤミン、ドイツ、ベルリンに生まれたこのユダヤ人は、ナチスに追われてパリに亡命し、スペインに逃げた。
 しかし、まもなく捕らえられ、強制収容所に送られることが分かると、大量のモルヒネを摂取して自ら命を絶った(あるいは暗殺されたという説もある)。
 一九四〇年九月二十五日の夜のことであった。  ベンヤミンが遺した原稿「パリ、十九世紀の首都」は、ジョルジュ・バタイユに託され、フランス国立国会図書館に秘匿されていた。これがフランスで出版されたのは一九八二年。
 日本語訳が岩波書店から出されたのは一九九三年のことである。
 邦訳では『パサージュ論』というタイトルがつけられた。
 これ、意味深なのですよ、もちろん。「パリ、19世紀の首都」がなぜ、「パサージュ」という言葉で、置き換えられるのか。
 だけど、これについて触れるのはまたの機会にしましょう。
 さて、ベンヤミンの「パリ、十九世紀の首都」を襲って書かれたのが、本書、デレク・セイヤーの『プラハ、20世紀の首都』である。
「シュールレアリズム」、日本語に訳せば「超現実主義」!
 読めば、20世紀初頭のプラハという街が、いかにシュールなところだったのかに驚きます。
 ウイーンより西側にあるのに、なぜか東欧。
 そんな政治的な問題と絡めてプラハという街に漂っていた空気が次々と明らかにされていく。
 ポール・エリュアール、アンドレ・ブルトンなどシュールレアリストたちがプラハを訪ねる1935年3月27日から4月10日までの出来事と、ダリやマルセル・デュシャンなどによるプラハにおけるダダ、シュールレアリストたちの活動など。
 たとえば、カフカ(1883〜1924)の亡霊のようなものが街を蠢く中、アポリネールは発禁になる奇妙な性愛を語る世界を彷徨っていくのです。

 2年ほど前まで、チェコ音楽コンクールに関わってきたこともあったので、プラハの持つ深さと「現実」に対する緊張感ということをなんとなく分かっているつもりになっていた。  でも、ちがう!読んでみて、思うのは、プラハという街は「現実」に対して、それを超越しようとするシュールな人たちを育てているところなんだということ。
 アンドレ・ブルトンの文章を、プラハで読みたくなりました。