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『茨城の妖怪図鑑』

  • 新刊

櫻庭凌也

『茨城の妖怪図鑑』
中沢健 著
出版社 TOブックス
ISBN-10 4864728216
ISBN-13 978-4864728218
発売日  2019/6/25

心霊番組も夏の楽しみのひとつだろう。理由は定かではないが、昔より怖くなくなったと言われがちだ。とはいえ、時代が変わっても新しい恐怖を表現することもあるのではないか。八尺様やひきこさんなど、新たな怖い話は掲示板サイト2ちゃんねるから生まれた。怖い話そのものは、時代が変わっても不滅だと思えてならない。そんな怖い話に登場する存在として、妖怪も挙げられるだろう。今回はそんな妖怪に関する本を紹介したい。

本書は「茨城」のご当地妖怪についての情報をまとめた図鑑である。

まず、著者について触れていこう。茨城県筑西市の出身の作家であり、UFO研究家としての一面を持っている。『ビートたけしの超常現象Xファイル』などのオカルト番組にも出演歴があるそうだ。

本書のタイトルは妖怪図鑑と銘打っている。単純に昔の言い伝えに登場する妖怪を扱うだけでなく、現代の都市伝説である宇宙人やUMA(未確認生物)にまで話が及ぶのだ。妖怪以外の存在が含まれていおり、無理矢理な感じがするが、その点が著者らしいとも言えるだろう。

一方メインの妖怪のイメージについては、

「結局私にとって(そして今を生きる多くの日本人にとって)妖怪のイメージは、水木しげる先生の作品によって作られたものであることは間違いない。」(本書4ページより)

と述べている。著書の妖怪の選定基準は紛れもなく水木しげる先生だ。著者も作品に親しんでいたことは想像に難くないだろう。妖怪と聞くと、『ゲゲゲの鬼太郎』など水木作品に登場するものを思い浮かべるだろう。妖怪漫画の大先輩が作ったイメージであれば、多くの人が知っているから基準としてはありだと思った。

ご当地妖怪というネタは既に『ゲゲゲの鬼太郎』に使用されている。後に触れる絵も恐ろしさを表現している。こうした点を見れば本書も異端とは言い切れないと思う。

本書は右ページが文章、左ページが絵という構成が多い。タイトル通り図鑑の体裁を意識している。ただし、文章は堅苦しい所はなく、わかりやすいと思う。中には、子供が見たらトラウマになりそうなインパクトが強めな絵もある。コラムのページでは小さい写真もあり、記事のような印象を受けた。何ページかペラペラめくってみるだけでも、妖怪のイメージがわかり、新しい発見もあると思う。

著者は伝統的な水木しげるの妖怪のイメージを踏襲しながらも、UMA研究家の立場も忘れない。試しに本書を手に取り、著者の世界観に触れて見てはいかがだろうか。