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『苦役列車』

  • 古刊

大平信行

文庫: 176ページ
出版社: 新潮社 (2012/4/19)
言語: 日本語
ISBN-10: 4101312842
ISBN-13: 978-4101312842
発売日: 2012/4/19

書評を自分も書いていると、さてヒトサマはどんな書評を書いてる(言っている)かしらと、レビューやら見たりする。
そんなこんなで調べていると、あるユーチューバーの女性が、なんと2011年に芥川賞を受賞された西村賢太氏にインタビューすると共に、受賞作『苦役列車』を取り上げるという話を聞いた。
……極めて邪な理由から、楽しみにしていたが、その話が上がってから早一月。どういう訳だか動画が上がってこない。見落としがあるかと調べてみたら、別のアカウントから西村氏のインタビューは出ていたが、取り上げられていたのが『苦役列車』ではなかった。西村氏も私に言わせれば「本調子」ではなく。
若い女性ゆえに遠慮したのか?
不満が残ったもので、ここから私なりの書評を書くとする。

前置きが長いのは、すっかり私のお家芸になりつつあるが、私が強調したいのは西村氏の泥臭さである。
はっきり言えば、どうという話ではない。
中卒で肉体労働を糧に生計を立てていた若き日の西村氏自身を物語の中に落とし込んだ私小説。
この一言で説明はつく。
文学的価値だとか、小難しい言い方をすれば、
性的な描写なら田山花袋か江戸川乱歩辺りがもっと際どく、
苦労話なら小林多喜二らプロレタリアートな連中がもっと悲惨に描いており、
彼らの亜流に過ぎないと、こうなる。

ならば西村氏の魅力とは何だ?
『苦役列車』が実写映画化された折、
それについてバラエティー番組で意見を求められた西村氏が凄い。
主演の某アイドルの頭を……ここでハッキリ書けないのが残念だが、とにかく酷い喩えを用いて説明した。
セクハラセクハラうるさい昨今に、ここまで平気な調子で下ネタがいえるおっさんは貴重なのである。
そんなこんで『苦役列車』。
芥川賞受賞作なんてお堅い肩書きとは裏腹に、実に俗っぽい。
受賞当時、読んだ私の衝撃がいかばかりか。勿論、受賞時点の西村氏の発言も随分話題になったが。
教科書にも載るお堅く高尚な世界になってしまった純文学なんざ読むヤツは限られる。少しスケベに、そして庶民的な物語を届ける人間がいなければ、先細るのは目に見えている。そういう意味で、西村氏のような敷居を下げる存在も必要なのである。

さて、西村賢太論なのか書評なのか分からなくなっときたところで総評をさせてもらえば、
純朴そうな娘に意地悪で読ませたくなる、若くモテない男のお話だ。
芥川賞受賞作だとか騙してな。もう7年ほど前だ、案外バレないんじゃないかと。読み終わって赤面するとことか実に楽しみである。
……こんなこと言ってるから彼女と別れるだって?うるせぇやーい。