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臼田夜半聖ヒルデガルドの『病因と治療』を読む』

  • 古刊

大平信行

『聖ヒルデガルトの『病因と治療』を読む』
臼田夜半著
単行本: 256ページ
出版社: ポット出版プラス (2018/12/23)
言語: 日本語
ISBN-10: 4866420081
ISBN-13: 978-4866420080
発売日: 2018/12/23

今日はクリスマス・イブ。道を歩けば、カップルや夫婦が、身を寄せ合い腕を絡ませ合い、羨ましいやら恥ずかしいやら。これじゃ「聖」夜か「性」夜か分かりゃしねぇ……なんて、冗談はさておき。
本来は、イエス・キリストの降誕祭という、その筋の人間とっては至って真面目な日。という訳で、真面目にこんな本を紹介しよう。

昨日付けで発売された本著「聖ヒルデガルドの『病因と治療』を読む」は、タイトルから分かる通りの解説書。
ただ、そもそもヒルデガルドなる人物が、まず日本ではあまり知られていない。筆者も不識にて、試しにWikipediaなんかで見てみたが……
ヒルデガルト・フォン・ビンゲンは、ドイツの修道女。薬草学の祖であるとか、作曲家として名高いとか、様々功績があるようだが、「光の影」なる説明困難な幻視体験をしたなど、日本人の感覚からはどうにも理解に苦しむ話もある。
また、『病因と治療』自体は、2014年に一度、同じく臼田夜半氏が訳したものが発売されているが、Amazon等々のレビューでは賛否が分かれており、内容の抽象さ・難解さを嘆く声や現代医学を例に対応に疑問符を投げ掛ける声も見られた。

臼田氏も内容の難儀さは感じていたのだろう。本著では、細かく章を分け、センテンスごとに説明・解釈を入れた。これだけで、大分読みやすく、筆者には感じられた。ただ、元々の中身が中々に難度の高い内容であるから、理解には時間がかかるかもしれない。無論、現代医学との隔絶もある。進化論や地動説、そもそも神を信じないなど、そういったところで、拒絶反応を示してしまう読者もいよう。

しかし、12世紀という遠い過去、ウィルスだのワクチンだの知られぬ時代に、当時を生きる人々を救わんとした、一人の聖女の心のうちが垣間見える一冊でもある。
なぜ人は病むのか?魂と肉体の関係は?子供を産むことの意義、そして人々の苦しみとの対話。正にヨーロッパ最大の賢女。哲学者と医師という両側面からアプローチする姿は、奇しくも道教をベースとした東洋医学の世界に酷似する。これは古きヨーロッパの医学・薬学を知る重要資料にして、キリスト教精神を知る入門書ともなっている。
クリスマス・イブ。その場限りの愛が囁かれる街角で、私はヒルデガルドを讃えたくなった。