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『立原道造 立原道造: 故郷を建てる詩人』

  • 古刊

山口謠司

『立原道造 立原道造: 故郷を建てる詩人』
著者:岡村民夫
単行本: 348ページ
出版社: 水声社 (2018/7/6)
言語: 日本語
ISBN-10: 4801003486
ISBN-13: 978-4801003484
発売日: 2018/7/6

24歳で亡くなった立原道造(1914〜1939)という詩人が建築家であったということを、恥ずかしながらぼくは、これまで知らなかった。
立原の詩も、同時代の北原白秋や中原中也などに比べれば派手さもない。
むしろ、薄暗がりに茫然としている感じがして、惹かれるけれど、どこに何を求めていけばいいのかを探るところまで、たどり着けないという印象を持ってきたのだった。
ところが、本書を読んで、24歳の詩人であり、建築家であった立原道造が、詩を「建築」していたことを知った。そして同時に「建築」を「詩」的に構築していたことを!!
つめたい!光にかがやかされて
さまよひ歩くかよわい生き者たちよ
己は どこに住むのだろう──答へておくれ
夜に それとも昼に またうすらあかりに?

己は嘗てだれであったのだろう?
(誰でもなく 誰でもいい 誰か──)
己は 恋する人の影を失ったきりだ
ふみくだかれてもあれ 己のやさしかった望み
己はただ眠るであろう 眠りのなかに
遺された一つの憧憬に溶けいるために
(ソネット「溢れひたす闇に」第二─四連、『暁と夕の詩』1937年12月)
(本書p243から引用)
 本書の著者、岡村民夫は次のように言う。
「立原詩には『住む』という動詞がたびたび出てくるが、それはみな通常の意味から逸脱し、潜在的生のあり方を意味している。……立原は、詩人を光と闇、生者と死者、有機物と無機物の『中間』に『住む』者と位置づけた」と記している(P244)。
結核という不治の病に罹り、転地療養のために、立原道造は、長崎、盛岡をさまようように歩いていく立原道造……彼は、「郷愁」「憧憬」を詩の言葉として多く使いながら、どこにもない自分自身の「故郷」を「建築」しようとするのだ。
岡村民雄によれば、立原道造が遺した建築物は16件ほどあるという。岡村はそれらを全て訪ねて歩き、立原道造の詩との関連性を詳細に検証していく。
 そして明らかになるのは、「立原道造山脈」の広がりである。東大工学部卒業後まもなく入社した石本建築事務所所長・石本喜久治や文学者としては室生犀星、板垣鷹穂、堀辰雄、杉浦明平、生田勉など……こうした人たちがあって、感性を研ぎ澄ました「立原道造」というひとりの詩人であり建築家が、まるで流れ星のように生まれて来たということである。

 今、さいたま市別所沼公園には、立原道造が遺した設計図をもとに作られた「ヒアシンスハウス」が建っているという。
http://www.tachihara.jp/info2-8/index_1.html