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『看護師も涙した 老人ホームの素敵な話』

  • 古刊

神亜莉沙

『看護師も涙した 老人ホームの素敵な話』
著者 小島すがも
発行所 東邦出版株式会社
発行年 2018年5月12日

福祉施設に就職先が決まってからというもの、書店へ行くと福祉に関する本が自然と目に入る。
そもそも、福祉に初めて触れる機会となったのは高校時代。私の母校には、福祉部という部活動がある。頻繁に活動しているわけではないが、月に1度の療護園訪問は、まるで伝統行事のように後輩へと継承されていく。
初めて療護園を訪問をした際、「もう次から行くのは辞めよう」と心の中で思っていた。しかし、次もまた次もなぜか行くことになり、気付けば卒業後も通うことに。
利用者さんの温かい言葉を聞くこと、また優しい後輩たちに会えることがここまで続けられた要因であろう。

本書は、利用者さんに寄り添う看護師さんの身の回りで起きたエピソードを記録したものである。中には、老人ホームでこんな物語が繰り広げられているのか…と暗い気持ちになる部分も多々あるが、必ずその中にも「愛」があることは文章から伝わってくる。

こんな話が本書に書かれている。

看護師さんが老人ホームで働き始めた頃。お風呂場で利用者さんの足の爪を見た際にあまりに酷い状態ということを知り、その後、お昼休みは爪切りの時間に。しかし、爪を切ってもらうことに抵抗感がある利用者さんもいる。そこで彼女が、「爪切りが趣味なんです」と言い方を工夫すると、快く切らせてくれるようになったのだ。

これは、看護師さんの「愛」である。足の爪というのはなかなか気付きにくい部位である。特に靴下などを履いていると、どんな状態かも全く分からない。その上、利用者さんの顔ばかりに集中してしまう人であれば、同じ状況下に遭遇したとしても見逃してしまうであろう。しかし、お風呂という短い時間の中で爪の状態が良くないことに気付けた視野の広さに、私は思わず感服してしまった。また、言い方を少しばかり工夫することによって利用者さんの反応が、がらりと変わるのはなかなか面白い。「言葉の選択」というのは、メニュー表を見て自分に合った料理を探し求めるように、適切な言葉を見つけなければならない。私も就職した際は、利用者さんに合った言葉を模索していきたいと思う。

介護の「介」と「護」は、双方とも「守り助ける」というような意味がある。
介護という言葉の意味を履き違えてしまいがちな現代であるが、本書は本来の介護の在り方を語っている気がしてならない。