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『何者』(新潮文庫)

  • 古刊

櫻庭凌也

『何者』(新潮文庫)
著者 朝井リョウ
出版社 新潮社
発売日 2015/6/26
言語 日本語
ISBN-10 4101269319
ISBN-13 978-4101269313

※先に言っておく。他のレビューにもあるように、今、精神的に余裕のない人は読まない方がいい。心にグサリと刺さる内容だから。

私は就活を終えてから呼んだが、本書を読んでも大丈夫であろう人に紹介したい。

作者は『桐島、部活やめるってよ』で有名な朝井リョウで、就職活動がテーマである。ざっくり言えば、違った個性がある就活生たちのやり取りの物語だが・・・

ただの就活奮闘記だと思って読んで騙された。なにが恐ろしいかと言うと、twitterで裏アカウントを作る一面や、他人をバカにすることで自分を位置づける一面を描くことだ。こうして人間の闇深さを表現しているのだ。
初版が2012年で、SNSが流行し始めた時に、それを上手く物語に絡めている点には脱帽だ。油断したタイミングでのどんでん返しには驚いたが。

本書を読んで、素の自分をさらけ出すことの難しさについて考えさせられた。

本書のある人物(ネタバレ防止のため名前は伏せるが)は、『山月記』の主人公李徴近い面を持っていると考えた。その人物は他人をバカにし、等身大の自分を他人に晒すことは無い。李徴も「尊大な羞恥心」「臆病な自尊心」という言葉で形容されるように、プライドが高く自分のことを他人に見せない。

現実では誰もがこうした一面持っていると思う。『人前で輝く!話し方』にあるように、私達は話す時、別人になろうとする傾向がある。他のことにも見られる傾向だろう。これに加えて他人と自分を比較する傾向もあるだろう。

「より良く見られる」とか、
「〇〇とは違う」とか、
自分以外の「何者」かになろうとすることに思い当たる節はないだろうか。本当の自分を見つめ直すきっかけとしての価値がある一冊である。