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『上下する天文―キトラ・高松塚古墳の謎』

  • 古刊

櫻庭凌也

『上下する天文―キトラ・高松塚古墳の謎』
来村多加史 著
出版社 教育評論社
発売日 2019/6/1
ISBN-10 4866240229
ISBN-13 978-4866240220

オリンピックスタジアム、高輪ゲートウェイ駅など、最近の建築は和風のデザインを意識している。日本らしさを反映させる意図があると思う。外観だけでなく、内部のデザインまで工夫を凝らすセンスやこだわりには感服せざるを得ない。今回はそんな建物の「中身に込められた思い」が明らかになる本を紹介したい。

国家の一大行事に関わる建築だか、遡っていくと古墳にたどり着くと思えないだろうか。簡単に言えば、身分の高い人の墓である。死者の魂を祀ること。それは太古の時代ならば、なおさら重要事項であったに違いない。重要な建築物といえば、秦の始皇帝の万里の長城、クフ王のピラミッドなどが挙げられる。

つい先日のこと、大阪堺市の百舌鳥古墳郡が世界遺産に登録されたことが記憶に新しい。私もそうだが、歴史の授業で、前方後円墳などの単語を暗記させられた人も多いだろう。

本書メインテーマは、キトラ古墳と高松坂古墳の比較である。両者共に、同時期に建てられたこともあり、多くの共通点が見られるそうだ。本書では両者の特徴を、周囲の地形や内部構造、壁画を基に解明していく。

では違いはどこか。著者の見解では、両者が異なっている点は天文図を描いた意図であるそうだ。天文図とは、それぞれの星がどこにあるか図式化する、現代でいう星座版のようだと言えるだろう。

「キトラ古墳には昇天の思いを、高松坂古墳には出行の思いをこめた画家の心理が読めた。」(本書218ページより)

引用部分は、魂の視点で考察した部分である。両者の違いは、天に昇る魂の視点で描くか、地上に留まる魂の視点で描くかの違いであるらしい。太古の時代でも、職人魂というか、こだわりというか、そういった思いを絵で表現したんだなと思った。

内部まで見て読み取れることがある。だから、「中身に込められた思い」が大切。そう思わせてくれる一冊である。