山口謠司 plus LAUNCH BOOKS RADIO

『ロング・グッドバイ』

  • 古刊

大平信行

『ロング・グッドバイ』
文庫: 645ページ
出版社: 早川書房 (2010/9/9)
言語: 日本語
ISBN-10: 9784150704612
ISBN-13: 978-4150704612
ASIN: 4150704619
発売日: 2010/9/9

「ギムレットには早すぎる」の名句に著名なレイモンド・チャンドラーの傑作を、あの村上春樹が訳し直した新訳版。

今でこそ、ハードボイルド小説の典型として語られる、本作等の探偵フィリップ・マーロウの物語は、実のところ、ハードボイルドとは外れている。
ハードボイルドとは固茹で卵。報告書にも例えられたノーベル文学賞作家アーネスト・ヘミングウェイの簡潔な文体。あるいは、『血の収穫』の名もなき私立探偵のごとき、感情を見せない強烈なニヒリスト像を指すとされる。

ならばマーロウは?チャンドラーの文体は?
情緒溢れる独特な表現。写真のように切り抜かれがちな描写の世界に、ムービー的な動きをもたらした技術。ハードボイルドとは程遠い。
マーロウ自身にしても、そう。警察の理不尽に憤慨する激しさと、見ず知らずの他人さえ気遣う優しさと。不器用で、どこか小粋な、アメリカ版の江戸っ子なのだ。

本著の邦題といえば、
清水俊二氏が訳した『長いお別れ』というのがあるのだが、
変人・村上はあえて『ロング・グッドバイ』なんていう、原題そのままの訳を用意した。しかも「ッ」や「グ」をはっきり発音する、今では少々古臭いような言い回し。最初はダサいとも思ったが、実はマーロウの人柄にはこちらの方が合っているかもしれない。

話はこの辺りで終わりにするが、最後にこれだけは書いておこう。
「フランス人はいい言葉を知っている」
……続きは本編を読んで確認してくれたまえ。
さようなら