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ウィリアム・ビー『だから?』

  • 古刊

大平信行

出版社 らんか社
発売日 2017/9/27
言語 日本語
ISBN-10 4883301672
ISBN-13 978-4883301676

『だから?』

パブロ・ピカソが『泣く女』を描いたとき、絵画は一度死んだように思う。いや、それ以前に、印象派の誰かしらは気付いていたかもしれない。写真の登場と共に、「人物存在の証明」という意味で、絵画の社会的な役割が喪失していったことに。それが、あるいはニコラ・ド・スタールを殺したかもしれない。
それ以前、例えばジャック=ルイ・ダヴィッドはナポレオン・ボナパルトを描いていればよかった。ダヴィッドの筆の上で、例えロバが馬に変わろうと、老いたる皇后がうら若き乙女に変わろうと、構わなかった。そういったフィクションが許されていた。
しかし、今では、証明写真の一枚撮るにも、髪型がどうだ、眼鏡がどうだ……一切の余裕、一切の自由がそこにはない。

クィーンが歌っていた。ジョーズは見ない、スターウォーズは嫌い、ピーター・パンも、スーパーマンも信じない……
今は、夢のない時代かもしれない。
だから、こんな絵本が生まれたのかもしれない。

「だから?」

そう答え続けるだけの物語。
絵本というものが子どもに夢を届けるものだったとして、今の子どもにそれが出来るか?
実に何ページとない本。実に中身のない話。
だのに、どうしてこれ程、胸に引っ掛かるのか?

全てが説明され、全てが理屈で紐解かれる、
現代だからこそ、語られるべき物語。
写真の世界を、絵の中に閉じ込めた皮肉。
だから……