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『その落語家、住所不定。~タンスはアマゾン、家のない生き方~』

  • 古刊

大平信行

『その落語家、住所不定。~タンスはアマゾン、家のない生き方~』

新書: 226ページ
出版社: 光文社 (2019/1/18)
言語: 日本語
ISBN-10: 4334043941
ISBN-13: 978-4334043940
発売日: 2019/1/18

「なんでもできる自由が手に入るのは、すべてを失ってからだ」
上記台詞は、『ファイトクラブ』より。ブラッド・ピット演じるタイラー・ダーデンはシネマの中の革命家。物を否定し、知識を否定し、殴り合い、終いには高層ビルを爆破する。それが、もう20年近く前の映画の話。

日本は遅れてるとか、ダーデンは間違ってるとか、そんな話をしたいんじゃない。
ただ、43歳になるこの噺家に、筆者はダーデンを見た。それだけの話。

今や600人いるとか言われる落語家の中でも、異色の存在といえるのが、
本著の作者・立川こしらである。
師匠は、M-1の審査員もやった、今話題の立川志らく。
師も何かと物議を醸しているが、蛙の子は蛙、いや鳶が鷹を生んだ……ような変な弟子である。

某ゲームにハマり、レアキャラ入手の為に海外まで行くと、その序でに現地で落語をやってみた。
なあんて破天荒なエピソードがゴロゴロ出てくる。
アーティストでいえば、西ドイツのバンド『CAN』でボーカルやってたダモ鈴木みたいな……
あっ、わかんない?じゃあ、いいや。
まあ、今の噺家の中じゃ、ブッ飛んだ存在には違いない。

ここ数年、落語が静かなブーム(ブームってのは騒がしいからブームなんじゃねぇのかい?て突っ込みは置いといて)らしいのだが、まだまだ年寄りの聞くもんだって、思っている人も多いだろう。
先日亡くなった桂歌丸さんの弟子に枝太郎さんてのがいるが、彼はVRで落語をやった。人間国宝だった先代柳家小さん師匠の孫・花緑さんは、現代人向けってんで椅子に座って落語をやった。
早稲田大学の深谷大先生が「伝統は形を変えて残っていく」と力説していたように、落語もまた過渡期にあるのかもしれぬ。
私は八代目桂文楽、六代目三遊亭圓生、三代目古今亭志ん朝のような正統派が好きだが、それだけが落語とは思わぬし、第一これからの世代に受け入れられるかどうかは疑問が残る。
変化していく時代の中で、かの立川談志の孫弟子たる彼はどう生き、それをどう落語に転化させていくのか。立川こしら、実はとんでもない大物かもしれない。

……なあんてったら大袈裟だが、
単純に変な奴の話として中々面白い作品である。
是非ご一読あれ。
お近くの書店にない場合は、上にアマゾンのリンクがあるから、『こしら』からどうぞ。
なんつってね。御粗末様。