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『さし絵で楽しむ江戸のくらし (平凡社新書)』

  • 古刊

櫻庭凌也

『さし絵で楽しむ江戸のくらし (平凡社新書)』
著者 深谷大
出版社 平凡社
発売日 2019/8/10
言語 日本語
ISBN-10 4582859194
ISBN-13 978-4582859195

「伝統は形を変えて残る。」

この言葉は、私が去年履修した授業で聞いたものである。この言葉を言ったのは、今回紹介する本書の著者、深谷大先生である。専門は江戸時代の文学や芸能なのだが、授業でも繰り返し語っていたことがある。それは、現代とのつながりである。嵐のライブの映像を見せ、その舞台の構造と歌舞伎のそれが似ているのではないかと主張することもあった。

本書は大型書店で偶然発見したものだ。本の中身は知らなかったが、著者名を見て購入を決めた。

それでは、本書について触れていこう。本書のコンセプトは、実に深谷先生らしいものである。

「我々現代人にも通じる江戸人の生きざまを目にすることで、先行き不透明な現代社会を生き抜くヒントをつかんでいただければと、心から願ってやまない。」(11~12ページ)

こう述べているように、江戸時代の人の生活から生きる術を学ぶというところに軸があるのだ。挿絵も多く使われており、タイトル通りに楽しみながら読めそうな構成である。まさに深谷ワールドといえる世界観に触れてもらいたい。

本書の大きな特徴は、やはり現代と絡めた説明が多いところであろう。例えば、タバコのポイ捨てや立小便の禁止などは、江戸時代からマナーとして定着していたのだそう。他には、高齢者の労働や、子どもを巡る環境などなど、最近注目される話題も多い。豊富な話題を扱っているため、目次を見て気になったところから読んでいくのも良いだろう。

数ある項目の中でも、当時の踊りと現代のアーティストの比較は印象的だ。個人的に注目したのは、専門の知識以外にも知見を深めている点だ。柔軟な発想には感服させられるばかりだ。

さて、本書の評価を調べてみたが、新刊ということもあってかレビューはまだ少ない。ただ、レビューだと、人によって好き嫌いが出でくるもの。文章でも絵でも、ことわざにあるように「百聞は一見にしかず」である。自分の目で本書を「一見」してみてはいかがだろうか。