山口謠司 plus LAUNCH BOOKS RADIO

『えんとつ町のプペル』

  • 新刊

神亜莉沙

もし大切な人があなたの前に姿・形を変えて現れたならば、それに気付くことができるだろうか。

本書は煙突と煙に囲まれた町が題材となっている。
配達屋さんが煙を吸って咳をしてしまい、配達中の心臓をゴミ山に落としてしまう。そのゴミに命が宿り、ゴミ人間が生まれるのだ。名前はプペル。
ハロウィンまつりの最中だったため、町の子供たちはプペルが仮装していると勘違いをしていたのだか、本当のゴミ人間だと分かると態度が一変。プペルは酷い苛めを受けることとなる。
しかし、そんな中でも少年・ルビッチだけはプペルのことを、

「なんだかなつかしいニオイがするんだよ。ぼくがすてたパンツでもまじってんじゃない?」

と言いながら臭いプペルのことを丁寧に洗ってくれたりと、親切に接してくれるのだ。
その「なつかしいニオイ」の正体は、ぜひ本書を見て確かめていただきたい。

さて、私は冒頭で、「もし大切な人があなたの前に姿・形を変えて現れたならば、それに気付くことができるだろうか。」と問いかけた。実はプペルの正体は、ルビッチにとって大切なある人物。ルビッチはクセやニオイでその人物の正体に辿り着くのである。たとえ姿・形が変わったとしても、面白いことにクセやニオイはそのままなのだ。なぜなら個々に埋め込まれているものであり、アイデンティティのようなものだから。
私は久しぶりに友人と会った際、化粧や髪型が変化した姿を見て「別人ではないか?」と思うことがある。しかし、何気なく書いた文字を見ると「あっ、字の癖は相変わらずだな!」と心の中がホッとした気分で満たされるのだ。例えるならば、錆びた鉄に塗料を塗ってもその部分は覆い隠されるだけで何ひとつ変わっていない状態と同じである。
このように変化しがたい人間の中身の部分を愛おしく感じるのは、私だけだろうか。

あなたは目に見える情報だけで他人を判断しようとしていませんか?
もし判断してしまっているのならば、本当にあなたのことを想ってくれる人を自ら失うことになってしまうかもしれません。